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_______________ 竜胆の君へ _______________ 「いっちゃんいっちゃんいっちゃーん!あーそぼーー!!」 隕石マンがウォーカーから身体を奪うことに成功すると、 どこからどう嗅ぎ付けたのか、 メルヘン王国の蜂の女王の子供であるヒナが、すぐさまやってくる。 それがすっかり定着してしまっているので、 隕石マンは驚きも断りもせずに、申し出に頷いた。 今日はメルヘン王国立である公園でのお遊びらしい。 もう何度も彼女といった場所だから、道中で大体分かってくる。 あとは海だとか、森だとか、山だとか。 ――ファンシーショップだけはご勘弁願いたいと、彼は毎回思う。 それでも一緒に入らないと、 泣いて暴れて泣いての無限ループ状態になってしまうので、 誘われたときは少し抵抗してもやめなかった場合、仕方なく入る。 逆らわなければ手間はあまりかからなくなることも、彼はいつしか覚えた。 それに、ヒナと遊んでいる間は、 ウォーカーに身体を奪い返される心配はない。 アイツは、そういう奴だ。 公園は途方もない広さなので、同じ種類の遊具も点在する。 手近な灰色の砂場を見つけると、文字通り ヒナはそちらへ飛んでいった。 とふ、と小さな音と砂埃を足元に舞わせて、何をしようかと思案する。 その後をついて歩く隕石マンが追いつくと、 思い立ったように、輝かしい顔つきを浮かべた。 「お城!ユーリ城より、メルヘン城より、おっきいの! いっちゃん、作って!」 ――さてこれはまた無茶な要求をしてくれる王女サマだ。 地平線の向こう、おぼろげに浮かび上がるファンシーな色合い・形の城の方を 一睨みすると、彼はざらざらの砂地に足を踏み入れた。 そんなお城なら、作っているうちに、彼女就きの教育係の爺やら 下っ端兵士やらが連れ戻しに来ることだろう。 平和ボケした国だ、と隕石マンは思う。 戦・争いなどガキの喧嘩や痴話喧嘩程度のもので収まり、 OEDO星や地球などの『他国』にアタイする星との交流・交易は自由化され、 仲良しこよしの友達ごっこが当たり前。 戦と地に塗れた世界や、 草木一本生えず、水一滴程も存在しない 空虚・殺伐な星達を見てきた隕石マンにとって、 この国はある意味で居心地が悪かった。 ウォーカーもまた同様のことを考えたことがあるだろうが、 居心地が悪い、とまで思ったことはないだろう。 奴は平和主義者だ。 と言っても、 彼は別にこの国の壊れ往く様が見たいなどという訳では、勿論ない。 その身体のもう一人の持ち主である男の、一対を成す赤い惑星の男ならば、 それを望むこともあるのだろうが。 先程の語り通り、彼はただ 見てきた世界の違いに戸惑いを感じているだけだ。 隕石マンが適当に砂遊びに付き合っていると、 二人の間には小さな砂山が出来ていた。 ヒナの身長の三分の一程度も標高のない、小さな、小さな小山だ。 この公園の砂場の砂・土を集めたとしても、 とてもあの規模の城足り得ないだろうに。 真剣な表情―楽しそうだとも、とれるが― で砂を寄せ集め、平らな山を作っていくヒナの姿に、 隕石マンは心の中で小さな笑いを零した。 平和ボケな国にまた、平和ボケな餓鬼が生まれた。 芯の強さは稀に感じるが、 己の望みを想い、耽り、他の事など視界に入れず、 己の生を支えることでいっぱいいっぱいな、子供。 自己中心的であるという点では、 この国随一の殺伐な心を持った女だともいえる。 戦場で、己以外の事を考えるような余裕は、無い。 己の事さえ考えられなくなったら完璧なんだが、 と、血生臭い想像に隕石マンは鼻を鳴らした。 ――こんな、考え方。赤の奴じゃあるまいし。 しかし、その血生臭さは、彼女の望みが纏うものだ。 人魚姫になって、泡になって、消えてしまいたい。 世界の終わりが見てみたい。 ずうっと眠っているままでいることは、できないの? 自分以外、誰もいない世界に、行ってみたい――… 子供ならではの無茶な望みばかりだが、その無邪気さの中に、 ときとして狂気を感じることがあった。 「いっちゃん〜、どいてっ!」 怒ったような色を含んだ、瞳。頬を膨らませて。 その声色には、脅しらしきものさえ含まれていた。 隕石マンは、無い首をもたげた。 平らな山はいつの間にか、自分の足元にまで到達していた。 「…お。悪ぃ。」 少しばかり崩れた辺りを固め直しながら、隕石マンはその場を移動した。 始めはそれはそれは戸惑ったものだったが、 こうして考え続けていると、稀に その望みを叶えてやろうか、 ―と、零しそうになる。 その毎にかぶりを振るクセは、是非とも治したいものだ。 この、君よりも大きく広い手は、君を泡にしてしまうことが出来るし、 君の世界の終わりを見せてあげることが出来るし、 君を、君だけの世界へ連れ、永遠の眠りを与える事だって、いつでも出来る。 君の望みを簡単に叶えてしまう力が、この手にはいつでも在る。 清かな月明かりに、星はきらめきを無くして― ―屍に映えるのは、 蒲公英に、向日葵に、雛罌粟に、百合に、霞草に― ―無節操な花の色。 たくさんの、蜂蜜の香り― ―甘ったるいのは嫌いだが、君は好きだと言う。 笑顔と柔肌の頬を伝う嬉し涙が渇き乾いて、大気に溶けるのを、 いつまでも 見つめている。 さぞかし、美しいことだろう。いや、なんと美しいことか。 無邪気なまま消えることができる。 なんと、幸せなことか――――…幼い彼女に、とって。 ガンッ。 「あでっ!!」 「手伝ってって、言ってるじゃないでしゅか…意地悪いっちゃんっ!!」 先程より、むくれた顔だ。 ――まずいな、と彼は思った。 何とか処置を施さなければ、無限ループが始まってしまう。 既にコマンドが叩き込まれつつあるようだ、 甘い、甘ったるい蜂蜜の香りと裏腹な、毒の臭い。 かぐわしい、モノの焦げる臭い。 ヒナの足元の砂達は思わずのけぞり、 彼女を中心にクレーターが出来上がる。 早急な措置が、必要だ。それも、 針の穴を通すような正確さと慎重さを兼ね備えて、だ。 物凄くわがままな上に、壮絶な程 厄介なお姫様なことで。 メルヘン王国一のわがまま娘の世話に追われながら、 隕石マンは、また、思う。 望みなんて叶えてやらないぜ、と。 何故かと言えば、簡単だ。 壊れ往く様や、永久の寝顔よりも、 この声を、表情を、感情を―見守っていたい。 それが、彼の望み。 俺は、不器用な偏愛主義者。 「なんで笑ってるでしゅか、いっちゃん? ヒナは怒ってるんでしゅよ!?」 「ああ、悪ぃ悪ぃ―――…オヒメサマ。」 お前の生を、俺はずっと見守ってる。 だから、壊れたり眠ったりするなら、出来れば、 俺も一緒に、連れて行ってくれ。 お前が華になる様を、俺はずっと 見守ってる。 「オヒメサマって呼ばないでってば!」 「ワガママな王女様だな。 女王になんてなれんのか?こんなんで。」 「なるもんっ!」 だから お願いだ。 俺のそばにいてくれないか? ワガママできない奴の分までワガママなお前が、好きだから。 ―この俺の思いが、お前に届くように。 ――この俺の願いが、叶いますように。 ―――…なあ。 竜胆の、君よ。 ●――――――――――――――――――――――――● あとがき 竜胆って咲くのに二年だか三年だかはかかるそうなんですよね。 育て甲斐と見守り甲斐がありすぎだと思います。 腹痛と頭痛を紛らわせるために(ぁ)書き上げた隕ヒナですぞえ。 最後の方の独白にある歌の歌詞に似通ってるものがありますな。いやん。 まあ分かる人は少ないでしょうが。 強いて言うならばサビの部分です、それは。 ちょこちょこと言葉を置き換えてたり付け加えてたり。 さて、Passacagliaと777を聞きながらルーズリーフに したためていったこの話ですが な ん だ こ の 異 様 な 暗 さ は 。 いや暗いのはいっちゃんの側だけなんですが。 なんじゃこりゃ。何があった宇宙の暴れん坊! 俺の中でのいっちゃんはもっと何も考えてない子供が苦手な 爆走ハリケーン野郎のはずなのに(は) しかし結局はほのぼのめに終わるんですな俺の文。 あれあれ。おかしいなあ。いやん。 喧嘩をあまりしないホトパテ、みたいな感じを 執筆中拭えずにはおられませんでした。 世話焼き兄ちゃんとガキ娘。 ………あああああああ(悔) で、または悪人顔の男と天然娘。 ………ぎああああああ(逝) ウォーカーさんはいい迷惑ですね。 そして俺は脳内変換激しいですね。げへへ。 03.10.21. 赤い惑星の男、赤い奴ってのは2Pウォーカーのことです。 破壊主義者だとか危険思想の持ち主だとか そんなイメージばかりが駆け巡り、 そんなイメージが先走り、ペンが走り、消しゴムは走らず。。。ああん。 取り合えず最強なことに変わりはないのです、赤様。 惜しむらくは竜胆の壁紙が使えなかったってことくらいさベイベー。 |
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