++ それぞれの夜(土方歳三の場合)++
薄暗い部屋の中・・・わずかな月明かりが、障子の向こうに人影を映し出していた。
あの穏やかな気配は、おそらく総司のものだろう。
どこかへ行けと言うのも億劫で、そのまま布団をかぶる。
眠ろうと目を閉じても、昂った神経はそうそう休まらない。
見届けた山南の切腹・・・まっすぐにこちらを見据えた瞳が、まぶたの裏に焼き付いて離れない。
・・・これから先、こんな事を何度くり返すのだろう。
もちろん、この決断は必要なことであって、決して後悔している訳ではない。
だが、それでも・・・
挫けそうな気持ちをねじ伏せて、闇を睨んだ。
どんな手段を使っても、と・・・新撰組を大きくするためにあらゆることをしてきた。
壬生狼と京の人々に眉をしかめられても、それがなんだと思ってきた。
そのためになら鬼になれると、近藤にも笑って言えた。
―――その覚悟がどこまで真実なのかと、山南に問われたような気がする。
そう、思うのは身勝手だろうか・・・。
処分を断行するよう主張したのは自分だ。
恨まれていて当然の山南の行動を、都合よく解釈するのは甘えだろうか。
これから進んでゆくのだろう修羅の道。
その業火の中を鬼として歩み続けるその覚悟をみせろと、
敢えて首を曝したのではなかろうか・・・。
そう思えば、熱いものがこみあげてくる。
仲間の命という白刃を突き付けられて、そこから逃げることはできなかった。
だから。今宵も、これからも・・・逃げるわけにはいかないのだ。
挫けている暇など、どこにもない。
生死をともにした仲間の命を犠牲にしながらも、悪鬼となって血塗られた未来を駆けていこう。
返り血と恨み事なら、いくらだって浴びてやる。この俺が。
―――あんたの墓に、俺は誓ってやるぜ・・・―――
小さなつぶやきは闇に吸い込まれ、誰の耳に届いたのか。
それぞれの想いを乗せて、夜は静かに更けていく・・・。
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