++ 嘆き++
―――但馬の冬はめっきり早い。
日本海から吹く風にさらされて、正月も迎えぬうちから雪に閉ざされる小さな村。
そのなかに埋もれたちっぽけな民家で、そっと溜息をつく男がひとり・・・。
都落ちしてきたのはまだ数ヶ月前のことだというのに。
人生の全てを諦めてしまったかのように、男は薄汚れた野良着を着て
貧しいこの村の暮らしの中に溶け込んでいた。
吹きさらしの縁側に腰かけ、西の方角に手を翳してみる。
なんと無力で、小さな手なのだろう・・・。
広げた指の合間からこぼれていく夕焼けの朱。
真白に積もった雪に照り返し、まぶしいほどに燃える太陽はまるであの日の京を思わせて・・・思わず目を背けてしまう自分に嫌気がさす。
流れていった夥しい血、屋敷を飲み込む紅蓮の炎・・・脳裏にくっきりと刻まれた無残な敗戦、そして失われていった同胞たちの叫び声が、今も彼の心を掴んで離さない。
許しを乞う言葉などなく、贖うすべもないというのに。
痩せた手の向こうに見える山・・・あのずっと彼方に、懐かしい故郷がある。
想いをはせることさえ申し訳なく、命を断つことも偽善のように思われ、
ただ追われるままに逃げてたどり着いたこの土地で。
男はただじっと、細い蝋燭の火が消えるようにその生命が尽きるその時を・・・
ただ黙ってうずくまりながら、ただ、じっと待っている。
桂小五郎という男の人生は、もう必要ないのだと自分に言い聞かせながら―――。
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