++ あなたへ++
――――新撰組屯所の、奥まった一室。
微熱にうかされた身体をもてあまし、暗がりのなか沖田は壁にもたれて物思いに耽っていた。
投げ出した両足のあたりには、喀血をぬぐった懐紙がいくつも丸めて放ってある。
・・・見つかる前に始末しなければと思いながら、腕を持ち上げることさえ億劫で動けない。
周囲の者たちには風邪をこじらせただけだと言ってあるが、どうやらよろしくない状態にあることに薄々気づきはじめている。
途切れてしまいそうな意識にしがみつくため、空ろな瞳で薄闇を睨みながら沖田は土方の事を想った。
・・・浪士隊から新撰組と名を改めて、粛正と称して何人もの仲間を斬った。
あなたが指示して、仲間の血でその手を汚した。
たぶん、近藤さんにはあなたのその重荷はわからない。きっと、永遠に・・・。
あなた自身がそれを隠して、近藤さんに見せないようにしているから。
近藤さんはまっすぐな人だから、見せないにこしたことはないけれど。
その手が汚れていくたび、あなたの顔からは笑いが消え、唇からは言葉が減っていった。
きっと、あなたは大きな大きな罪を背負っているつもりなんだね。
新撰組がかぶるべき業を、あなたがひとりで引き受けようというの・・・?
昔は、ただ一緒にいられればそれでいいと思ってた。
あなたがいて、近藤さんがいて、源さんや山南さんたちがいて・・・。
その時間が続けば他に何もいらないと、それだけを願ってた。
願いは今も同じだけど・・・。
あなたがその身を削ってあの人に愛を注ぐから、わたしはそんなあなたを守ろうと思う。
ずっと続いて欲しかった、あの時間を守るために。
あなたがその手を罪の色に染めるのなら、わたしは代わりに血の紅を背負おう。
奇麗な血の花を、この京の都に咲かせよう。あなたが望む限り、いくつでも。
返り血で染まったわたしは、修羅のように燃えながら愛を謳い続けよう。
愛が強すぎて、わたしたちの形を変えてしまったとしても
行き着く先が一筋の光さえ射さない奈落の底だったとしても。
あなたはその愛を貫いたらいい。
常識も理性も邪魔なものはなにもかも、紅く汚れた愛でわたしが壊してあげるから。
この生命が燃え尽きるその時まで、あなたたちを失いたくはないから。
ずっとずっと、それだけを願ってきたのだから。
その両の足で大地を踏みしめていられるように、どうか生きる道を、信じる心を曲げないで。
まだ、わたしは立てる。立って、戦わなくちゃ・・・。
あなたとともに歩む、そのために。
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