ロープのテンションについて
フリークライミングで,お世話になりたくないけどもしものときに大変お世話になるのがロープ(ザイル)ですよね。
そのもしもの時には一体どれだけのテンション(張力)がかかるのでしょう?
それが分かるとロープの品定めなどができると思い,計算してみることにしました。
1.自由落下したときにどれほどの速度で地面にぶつかることになるんでしょう?
この計算はすでに「ランニングビレーについて」で計算済みなので,詳しくはそちらを参照していただいて,
ここでは,結果のみを表に示します。
| 落差(m) | 速度(km/h) | 落差(m) | 速度(km/h) |
| 2 | 23 | 15 | 62 |
| 4 | 32 | 20 | 71 |
| 6 | 39 | 25 | 80 |
| 8 | 45 | 30 | 87 |
| 10 | 50 | 40 | 101 |
ランニングビレーがきちんと取れていれば,普通2〜10mほど自由落下すると思われます。
もちろん,傾斜がゆるければもっと前に止まるでしょう。ここでは垂直に自由落下するという前提(最悪の場合)で計算してみます。
2.ロープにかかるテンション。
計算は力積の計算です。
ロープを一種のバネと考えると,ロープの長さが長いほどバネ定数が小さくなり,伸び量は大きくなります。
つまり,ロープにテンションがかかり始めてその伸びが止まるまでの時間を考えて,
その時間内に一定の加速度がかかったとすると,そのときのテンション(平均値)が求められます。
最大のテンションを求めるには加速度の時間変化が必要です。
これはなかなかえられませんので,ここでは平均のテンションで考えます。
考え方は簡単です。
落下する人の体重Mと,ロープにテンションがかかり始める瞬間の速度vの積(Mv)が,
ロープにかかる平均の力Fと止まるまでの時間tの積(Ft)に等しい,
という関係(Mv=Ft)を用います。
ただし,これは静止した状態でロープにかかる重力の力Fgは含まれていないので,最後に加えます。
平均の力は,結局,F+Fg=Mv/t+Fgで求まります。
この値がロープの規格より大きい必要があります。
ロープを購入するときに,最大の静止張力がkgfの単位で書かれています。
ここで求めたF+Fgは力なので,単位はN(ニュートン)です。
kgfの単位に直すときは,9.8で割ります。
およそ10で割っても差し支えないと思います。
ちなみにこの9.8m/s2という値は重力加速度の値です。
では,実際の値を入れてみましょう。
僕の体重は70kg少々なので,その値で計算してみます。
まず,Fg=70kg×9.8でおよそ,690Nです。
僕はあまり大きな滝を登らないようにしているので,落ちてもせいぜい8mほどとします。
8m自由落下すると上の表でv=13m/sになります。
ロープが1秒で,落下を止めてくれたとすると,F+Fg=70*13/1+690=1600Nです(kgf表示では,160kgfとなります)。
この1600Nという値は最大値でないことに注意してください。
おそらく最大ではこの3倍近くの張力がロープにかかるでしょう。
同様にして,僕の場合(体重70kg)で落下距離と張力の関係を以下の表にまとめます。
ただし,停止までの時間を全て1秒にしてみます。時間が長い方が張力は少なくてすみます。
| 落下距離(m) | 平均張力(N) | 最大張力を平均張力 の3倍と見込んだ値(kN) |
| 2 | 1130 | 3.4 |
| 5 | 1380 | 4.1 |
| 10 | 1670 | 5.0 |
| 20 | 2080 | 6.2 |
| 30 | 2390 | 7.2 |
実際にかかる張力は表の右端の値のように,平均張力の3倍以上は見ておくべきだと思います。
ですから,5mほど落下する危険があれば,ロープの静止最大張力は4kN以上がほしいところです。
ちなにみ,9〜11mmザイルで静止最大張力が大体7〜9kNほどです。
(シングル仕様の場合です/ダブル仕様だとその60%強しかありません)
これだと20m以上落下することがあれば切れる可能性がでてきます。
そんなに落ちなくても,例えば荷物を背負っていたりして合計100kgの場合,10mの落下でも7kNを超えてしまいます。
そんなことが起こりうるクライミングでは,ランニングビレーの間隔を考えることや,
ツインロープやダブルロープにするなど,ロープの張力を考慮した予防策が必要になると思います。
なお,ロープスリングに使うロープは6mmで7kN,7mmで10kNほどあります。
更にソウンペープスリングは22〜25kNほどあります。
カラビナの強度も18〜25kNほどです。
ですからロープ(ザイル)の強度の重要性はもっとも安全性につながります。
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